新曲視唱で使うべき教材について(初級編下)。

初級編上の教材の次について。

レベル1.5、初級上の教材を終えた人、ソルフェージュの基礎が身に付き始めている人。


(前回の記事をご覧になっていない方は、先にこちらをご覧下さい。新曲視唱で使うべき教材について(初級編上)。)




初級編上の教材「子供のためのソルフェージュ(1b)」を終えられた方は、ソルフェージュの基礎が身に付き始めていますので、ここでさらにもう少し難しい問題集で磨きをかけて、ガッチリとした基礎力を養成する必要があります。ここを越えられるかが一つの山だと言っても良いでしょう。

この「コールユーブンゲン」は、声楽の分野で非常に有名な本で、古典的名著との呼び名も高いです。本来は合唱の教本なのですが、内容が非常に充実しているので、ソルフェージュの教材としても用いられることも多く、この本に収録されている問題が、実際の音大の入試で出題されることもあります。

第1章から始まり、第42章までありますが、その内容はハ長調での2度から7度までの徹底した練習(1~33)と、それ以外の全調を含む応用問題(34~42)からなっています。

1~33の内容は、徹底した音程の基礎練習問題に加え、取りにくい音程である増4度用の練習問題や、シンコペーションや付点リズムの練習など多岐にわたります。機械的な練習が非常に多いですが、この内容をこなす事によって確実な音程感が身に付きます、この能力は、このあとの音楽生活で一生使える大事な感覚です。

34~42の内容は、33までで学んだ音程やリズムの要素を含む、全調での応用問題です。増2度,増5度,減5度などの非常に難しい音程の問題や、平行調への転調問題、複付点音符の問題など、この本だけで、オーソドックスな音楽全般の要素を、一通りすべて網羅しています。

これらの内容をこなすのには時間が掛かりますが、丁寧にこなし身に着けてしまえば、ソルフェージュの基礎的な能力は完成します。音大によってはこの段階で十分受験可能です。

また、すべての調の問題がでてくるので、しっかりした調性感を身に付けるために、必ずスケールを弾き、声に出してスケールを歌うことを絶対に忘れないで下さい。調性が異なる問題が増えれば増えるほど、この作業は重要です。今まで以上に、異なる調性をしっかり感じ頭に叩き込んでください。

この教材でどの程度の能力が身に付くのか?

もう既に、本文で少しネタバレをしてしまいましたが、この教本を丁寧に学び終えることが出来れば、ソルフェージュの基礎力が完成します。具体的に申し上げれば、

  • すべての調での、基礎的な新曲視唱が出来るようになる。
  • すべての調での、基礎的な聴音も出来るようになる。
  • ある程度難しいリズムの曲も歌えるようになる。
  • 中級以上の、複雑で難しい問題の練習に取り組むことが可能。
  • 音大によっては、十分合格ラインのソルフェージュ力が身に付く。
  • この段階で、音感がかなり向上する。流れている曲の音程が分かるようになってくる。
といったレベルです。全調での問題や、さまざまな音程、リズムの組み合わせを身に付けることで、ソルフェージュ能力の基礎は完成です。新曲視唱や聴音での苦手意識がなくなってくるレベルでしょう。

もちろんまだ出来ないことは沢山あります(複雑な転調を含む新曲視唱や、聴音など)中級以上の難しい問題でも簡単に歌える(取れる)というようなレベルにはなりません。しかし、基礎的な問題ではミスが激減します。そのうえある程度の難しい問題もそれなりに歌えるようになるでしょう。

この本を修了すれば、初級は卒業です。基礎的なソルフェージュ力(音感)はガッチリ身に付いています。初級といえども簡単な音大の入試には通用してしまう程度レベルです。音感は非常に向上していますし、耳コピなどの実戦的なスキルも、最初とは比べ物にならないレベルになっているはずです。音大生であれば、何科であっても最低限これぐらいは身に着けていたいレベルです。

このレベルまで身に付けた人は、この後さらに難しい課程へ進むことが出来ます。これ以降は内容が深くなり、専門的な内容が多くなるため、ソルフェージュの力を身につけることに意欲的でもっと上達したい人や、音大生などの専門家を目指す人向けの内容になります。